【出会いと始まり】


7年前のある日、当時在職していた文芸大学の私の研究室に、水野さえ子さんが地域の会議でご一緒した経営コンサルタントのOさんに連れられてやって来たのが「はままつシャツ」の始まりでした。その時水野さんから、繊維のまち浜松でシャツを作りたい、そしてそのシャツで男をおしゃれにしたい、などの想いを聞かされました。デザインマーケティングという立場から商品・事業を企画したり、地域産業・地場産業の振興をテーマにしており、ちょうど遠州の繊維産業について検討していたので、その時の水野さんの話を「おや?」という思いで聞きました。

【衰退する地場産品のもつ課題】


 商品・事業を作るということは、その商品を通じて生活文化をつくることと考えていたので、衰退気味の地場産業にもそこに課題があると考えていました。遠州地域の繊維産業も同様で、そこにいわば水野さんのような普通の奥さんが「遠州織物で作るシャツ」に想いを持っているということに、ある種の可能性を感じました。
 生活文化という言葉をよく使いますが、定義をすれば「人、物、事がそれぞれが糸のように織り込まれた生活の型」ということになるでしょう。

 

【生活文化を育むシャツへ】


 水野さんたちが7年間シャツという物を通してショーや音楽会などの事を催してきたことは、シャツ文化を生み出してきたことに他なりません。
いま新たに「シカクイシャツ」というブランドやそれをつくる「ちくちく出張講座」などはシャツ文化の視野を更に拡げることになるのではないでしょうか。期待したいと思います。

 

伊坂正人(静岡文化芸術大学 名誉教授)