ユーザーを驚かせる織屋の魔術師

杉浦テキスタイル株式会社(浜松市東区中郡町)

杉浦邦秀さん


◆「まさにミラクル!」

 杉浦テキスタイルさんの生地を一言で表現するなら「まさにミラクル!」。例えばシックでシンプルなモノトーン一色の生地を手に入れ、洋服に仕立てます。するとまるで洋服が話し出すかのように、今まで気づかなかった新しい表情が次々に溢れ出して、何度も嬉しい驚きを感じるのです。

 「うちの生地は個性が強すぎると、長年のお客さんにも言われるよ(笑)」と笑う杉浦さん。その笑顔には「ここでしか生まれない無二の生地を織っている」という誇りが満ち溢れているように思います。

ヒット生地の中のひとつ
ヒット生地の中のひとつ

◆地道に繋いだ顧客との絆

 織布工場として創業した家の息子として誕生した杉浦さん。大学卒業後、パジャマ製造販売会社に勤め、営業から製造内容まで幅広く経験を積んだ後に帰郷。当時は問屋から依頼されたものを織りあげる「賃織」の工場でした。しかし「これからは自分で作った生地を自分で販売していかなければ生き残りはできない」。そう感じた杉浦さんは、志を同じくする仲間たちと一躍奮起。東京や大阪、名古屋など各地へ営業に回るようになりました。

 「前職の営業経験が活かせたのはよかった。自分が織った生地を持っていくと、もう少し厚くできないか?など具体的な要望を聞くことができる。帰ってきてその夜すぐに織り方を変えて、次の日に送り届ける。こうして少しずつ注文に繋がっていきました」と当時を振り返ります。

杉浦さんの聖域ともいえる工場内を見せて頂きました
杉浦さんの聖域ともいえる工場内を見せて頂きました

◆着心地の良い素朴な生地を追求

杉浦さんが作る織物は「着心地の良い素朴な生地」がテーマの原点。自家生産の綿を収穫し、紡いで織り上げる職人さんの言葉に影響され、何度も何度も自分で試行錯誤を繰り返しながら自らの生地づくりを極めてきたといいます。

「当社では、シャトル織機のシャトル部分を外し、レピアで動くように改造した織機を使用しています。シャトル織機並みの緩やかな回転なので、太い細いの強弱ある糸も織ることができます」。

 

太さや形など不規則なスラブ糸を生産できる職人さんも少なくなったそう
太さや形など不規則なスラブ糸を生産できる職人さんも少なくなったそう

◆これぞ職人技

 また「生地は織り上がった段階が最終ではありません。その後、湯の中で糊を抜いて、タンブラー乾燥する加工作業で生地が縮むことも計算することが必要です。そのため、糸の性質や撚りの強さ、織り上げる密度を決めるんです」。これまで生み出したオリジナル生地の記録は、製織指図書(縞割り設計図)に残されているとはいうものの、微妙な感覚を調整できるのは、数多くの織り上げ経験で培った職人技があってこそ。

 今では海外のブランドメーカーからの依頼も多く、年によっては5割が海外注文ということもあるそう。特にこだわりのオーガニックコットンの依頼は「杉浦さんでなくては」とリピートの注文が多いそうです。

 

個性のあるスラブ糸で織ったからこそ、独特の凹凸感が生まれる
個性のあるスラブ糸で織ったからこそ、独特の凹凸感が生まれる
撚りの強い糸を使用し、敢えて伸び縮みを狙って作ったという絣(かすり)生地
撚りの強い糸を使用し、敢えて伸び縮みを狙って作ったという絣(かすり)生地

◆生地との出逢いが楽しみ

 とはいえ 杉浦さんの生地作りは、糸やさん、染めやさん、整経やさん、加工やさんなど多くの職人さんたちとのチームワークがあってこそ仕上がります。短期間に大量に注文するというよりも、その時にだけ手に入る唯一無二の生地との出逢いを求めて、じっくり杉浦テキスタイルさんの生地に向かい合うのが、杉浦さん生地の魅力堪能法だと思います。

 

織りあげられていく生地
織りあげられていく生地
織機を動かす設計紙(ドビー)
織機を動かす設計紙(ドビー)

【DATA】・・・・・・・・・

杉浦テキスタイル株式会社

浜松市東区中郡町995

オリジナル服地製造・販売