織物の街 浜松 人物探訪

南織物工業協同組合 工場長山下さん

 今年2018年は「遠州織物 産地の学校」という勉強会に参加しています。品質の良い布が織られる遠州織物の現場や技術を巡り、産地と繋がりながら学んでいこうというものです。

 

 先日は糸から布へ織り上げる前の行程「サイジング」の工場へ見学に伺ってきました。布を織るといえば「機屋さん」。それでこれまで何度か機屋さんへ伺う機会はあったのですが、「サイジング」は私も今回が初めて。最初は具体的な意味も分かりませんでした。

 

 伺った日は雨上がりの蒸し暑い日でした。糸に糊付けするための大きなローラーが蒸気と共にグルグル動く工場の中は蒸し風呂状態。その隙間を縫うように職人さんが機械の調整や糸の具合を見ながら作業されていました。見ている私たちも立っているだけで汗がじわじわと吹き出してきます。

 

 そんな中で山下工場長から伺ったお話は、とても繊細な仕事でした。

サイジングという作業は「糸を受け取る機屋さんの次の作業考慮すること」「糸の状態を見極めること」。品質の悪い糸は事前に見極めてその旨を先方に伝えるとこもトラブルを防ぐための大切な役割と仰られていました。此処では糸から織りあがった生地の品質そのものを支える大きな役割も果たしているのですね。

 

 糸と織、その両者の橋渡しとしてバランスを図りながら糊の濃さや、糸の巻取り具合にまで配慮を重ねられているサイジングの現場。なかなか消費者からは見えにくい役割の中で、私たちの「衣」を支える作業されている職人さんを是非ご紹介させて頂きたいと思います。今回山下さんからサイジングについて書かれたテキストを頂戴いたしましたので、以下ご紹介させて頂きます。

サイジングとは?

サイズ(size)は、織物用の「糊」→ サイジングとは即ち「糊付け」

糊というとクリーニング店で用いられるイメージですが、ここでは「経糸糊付け」です。

なぜ経糸に糊付けをしなければならないか?

織物にもよりますが、例えば 1 インチ(2.54cm)に 100 本の糸があり、これに緯糸を打っていくとして、 その度にこの 100 本の糸はそれぞれ隣の糸と摩擦をしている訳です。織機によってこれは高速で行われま す。この糸にかかる謂わば「ストレス」を軽減するためにサイジングを行います。

糸の「ストレス」軽減とは具体的に何をするのか?

「毛羽を伏せる」「滑りを良くする」「補強する」の3つです。糊を内部に浸透させ糸の「強力」を上げ、 また表面をコーティングして滑らかにします。

糊って何?

 我々の使う糊は大雑把に言うと「デンプン+ポリビニルアルコール+油+水」で出来ています。 澱粉は水を加えて熱すると糊化します。これは紙を貼り付ける時に用いる、いわゆる糊と同じようなもの と思って下さい。澱粉と言っていますが主にコーンスターチを使っています。(タピオカ澱粉を使ったりコ ンニャクを使ったりする場合もあるそうです)ポリビニルアルコール(PVA)とは、テレビなどの外装に 使われている、あの硬い部分の材料です。糸の種類によって用いるべき糊は異なります。

サイザー(糊付け機)を見てみよう(糊付けの工程)

「引っ張って、まとめて、糊に沈めて、絞って、乾燥させて、分けて、巻く」 荒巻を最大20本までセットしまとめて引っ張っていきます。この際適切なテンションを掛ける事が大切 です。この後、ソーボックス(糊のプール)に糸を潜らせて糊を吸収させます。次いで絞りローラ、仕上げ ローラを経て、シリンダー(蒸気で加熱する巨大アイロンと思って下さい)で乾燥させます。シリンダーの 温度は個別に管理され、乾燥不良、過乾燥を防ぎます。この設定も糸の種類、本数、番手(太さ)によって それぞれ異なります。次にディバイディング・ロッドによりシート状になった糸を分割し、最後の巻取り工 程へ移ります。巻取りに於いては、フレンジに合わせた巻き幅、トルク、プレス圧力を適切に調整する必要 があります。

トラブルあれこれ

糸ですので当然切れます。糸自体に問題がある、掛けるテンションが強すぎる、或いは弱すぎる、など 様々な原因が考えられます。切れた結果、これに対処しますが、切れる場所によっては発見されずそのまま 巻き取ってしまう事があります。これは「貼り付き」となって製織の工程で問題となります。巻取りは一見 巻いているだけで簡単に見えますが、ここでのトルク、プレス圧力は製織時に影響を及ぼすため、機屋さん との意見交換が大事です。更に「耳」と呼ばれるビームの端の部分は、硬すぎても柔らかすぎてもいけない ので、頻繁にチェックし調整を行っています。

最後に

サイジングで最も困難な点として挙げられるのは「停めることが出来ない」という所だと思います。糊を 使っている関係上、停めると固まってしまう訳です。よって毎回が一発勝負であり、常に緊張感を持って臨 んでいかねばなりません。更に、実際に「織る」のは機屋さんですから、トラブルが発生した場合は色々と 大変な訳です。ですが、機屋さんとしても、ある意味で最大の課題である「効率」を左右する「糊」を握る サイジング工場と上手くやっていく必要があります。こういう関係から、我々としては、常にサポートする 立場として、真摯に、機屋さんが快適に製織出来るよう努力しています。そしてそれが最終的に良い製品を 消費者の皆さんのお届けする事に繋がる、と確信しています。なので是非皆さんにも、ハンカチや衣類など 購入される際「国産」と書いてあるものを、ちょっと気にしていただけるととても嬉しいです。宜しくおね がいします。

 


南織物工業協同組合 工場長 山下