配色センスが光るシャツにクールなストライプジャケットに身を纏うこの方は遠州織物工業協同組合事務局長の松尾耕作さん。「自分が着る服は自ら気に掛けて身に付けたい」と話し、生地を知り尽くす松尾さんが自分でデザインして作った服を披露してくださったというわけです。さすがお似合いです。
松尾さんは長年組合の事務局に携わり、2003年からは事務局長を務めています。そこで遠州地域の繊維業界の変遷について教えていただきました。
「もともと繊維産業は朝鮮戦争のころのガチャマン景気で一気に盛んになりました。しかし薄利多売で品質悪化を案じた政府が登録法を定め、生産者を管理。組合ももとは登録法管理の役割が主流だったわけです」。
しかし次第に繊維業界は衰退し、登録法も小泉内閣時期に撤廃。最盛期に1300社だった組合員数は現在70社になったそうです。とはいえ、もともと遠州地域は江戸時代から綿の産地として発展し、その後三大産地のひとつとして数えられるようになった場所。明治中後期には別珍コールテン、昭和中期には注染そめを核としたゆかた等、多様な形で発展してきた技術のベースを持っていました。そしてシャトル織機という旧式機械の保有台数は国内最大といえる地域で、現在活躍している機屋さんは、それらを活かした生地づくりが大きな特長となって注目されるようになってきたのです。
そこで組合は、機屋さんの素材を使った試作品を紹介したり、アパレル・デザイナー・消費者等の要望に情報提供を行ったりして組合員の皆さんのサポート支援に取り組んでいるそうです。
こうした地道な活動から、今では遠州地域は多種多様な織物を楽しめる総合的な産地としても知られるようになり、ファッションの最先端と言われるパリやミラノでも高く評価されるようになってきました。実際海外ブランドのデザイナーたちが、わざわざ遠州の機織工場を見学に訪れることも少なくないようです。
「さらに皆さんのような作家さんや、ファンの方々の活発な活動のお陰もあって、10年ほど前から遠州織物の名前は広く一般消費者の方にも知っていただけるようになってきました。組合にも個人の方々から問合せがあったり、直接来訪くださったり、興味をもってくださる方が確実に増えていることを実感しています」と松尾さん。
これまでにも電磁波防御の布を開発するなど数々のチャレンジをしてきた遠州織物工業協同組合。これからも組合員の方々と力を合わせ世界各地へ遠州織物をバシバシ発信していただきたいと思います。
【DATA】・・・・・・・・・
遠州織物工業協同組合
静岡県浜松市中区山下町1番地2 遠州織物会館 3F